「入ろっか?」

「え、入っていいの?!」

「いいだろ、いちお卒業生だし」


そう言いながら、すでに門に上り始めている郁也。この学校セキュリティ大丈夫かな。

というか、こんな無邪気な笑顔、珍しい。今日はやけに素直だな、なんて思いながら。


「……ちょっとだけ、だよ?」


今の状況、楽しんでる私がいたりする。


「夜の学校とか、ワクワクしない?」

「う、怖いよー。七不思議とかさ」

「え、林檎、そういうの信じるタイプだっけ?」

「信じてるわけじゃないけどー……」


玄関は空いてなかったけど、鍵の開いている窓を見つけた。ヒョイっと飛び越えて、なんのためらいもなく校舎に入っていく郁也を見て、高校のときみたいだな、なんて思う。


時はもう過ぎた。ーー大人になった。


だからかな。この環境が、懐かしくて、あったかく感じるの。