「それよりごめんね遅くなって……」
「いいけど、珍しいな林檎が遅れるなんて」
「うっ……ごめん、期末レポート終わってなくて……」
夏休みに入る前には期末試験がある。四年生とはいえ、管理栄養学科はまだまだ学ぶことがたくさんだ。
そういう郁也も、髪はあんまり整えられてないし、服装にも気合が入ってない。郁也は学年一位だったこともあって、ちょっとやそっとじゃ入れないような有名大学に通っている。就活が終わった後も、やる事はたくさんだ。
ここ数日、きっとすごく忙しかったんだろうと頭をよぎる。
「今日は、どこ行くの?」
「んー、どうしよっかなー……」
そう言いながら、何のためらいもなく私の手を握ることにもう慣れてしまった。
日が沈みかけた夕方。
忙しい日々を送っていたわたしたちが会えるのは、いつもこんな時間帯。
いつもなら、何も考えずふらふらっと、そこらのお店に入ったり、お互いの家へ行ったりするんだけど。
今日はなんだか、ヘンだな。
「歩くの?」
「ん、ちょっとだけ歩こ?」