ーー好きだ。
胸が苦しいくらい、なんて言ったらなんて表現したらいいかわからないくらい、好きなんて言葉じゃ足りないくらい、目の前にいる林檎のことが愛おしい。
だって、そんな風に俺のこと信じてくれてるなんて思わなかった。
いつも外見だけですべてを判断されて、見ているのは上部だけ、欲しいのは身体だけ、そんな人間としか関わったことがなかったんだ。
俺のこと、こんな風にちゃんとわかってくれるの、林檎、おまえだけだよ。
「林檎、ごめん、本当に、本当にごめん」
「……私ね、本当は、待つのがすごく苦手なんだ」
本当は、舞に聞いて知っていたけど。
やっと話してくれるんだ、と。うっすら感動さえ覚えて、さらに強く林檎を抱きしめる。
「……うん、ごめん……」
「ううん、聞いて。昔、好きな人に遊びに誘われて、騙されたことがあったの」
「……うん」
「その日、その人は待ち合わせにすごく遅れてきてね……それから、誰かを待つっていうのが苦手で、待ち合わせに誰かが現れなかったりするとあの日のことがフラッシュバックしちゃったりしてたの」
ーーそんな辛い過去。
逃げて当然だった。
帰って当然だった。
なのに。
「……でもね」