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陽気なクリスマスソングが、街を流れる。駅にはこれから大切な人に会いに行くであろう人たちがたくさん行きかっている。

きらきらひかるイルミネーションや、プレゼントを抱えたお父さん、サンタのコスプレをしてケーキを売る人。

いつもはもっと閑散としているのに、今日はやっぱりトクベツな日。

この駅のシンボルである大きな時計台がさす時刻は9時50分。いい時間にについたな、とその下へ駆け寄る。

待ち合わせは10時。

10分前行動は大事だよね。

そんなことを考えながら、時計台の下にあるベンチに座った。

そうだ、あの日も。こんなベンチに座って、彼を待っていたんだったな。……こんな日に思い出したくなんてないのに。

手袋を忘れたせいで指がかじかむ。雪が降りそうなくらい、今日は寒い。カイロは忘れずに持っていてよかった。


「さむっ……」



カバンの中にしのばせたプレゼント。

普段巻かない髪を丁寧に巻いて、舞に教えてもらったメイクも軽く施して、かわいいって褒めてもらえた新しいワンピースにコートを羽織って。

……わたしの精一杯のオシャレ。

全部、郁也のためなんだ。



「早く来ないかな……」



時計台の針が、10時をまわった。

郁也の姿はまだないーー