「てか、ほかの男のこと思って顔赤くしないで、」
あれ、「すんな」じゃないんだ。いつもの命令口調じゃないから、少し戸惑う。余裕がなさそうな郁也の声。
「焦る」
郁也、可愛い。どうしよう、可愛い。嬉しい。郁也には申し訳ないけど、嫉妬してる郁也がかわいい。
私のことで、こんなに不安になってる郁也なんて珍しくて。
「郁也としかしないよ?」
「当たり前だろ、」
「本当に意味わかってる?」
「はあ?」
「雄也とキスなんてしてないよ、私」
ビックリしたような顔で目を丸める郁也の顔が可笑しくて思わず笑ってしまう。もしかしたら雄也が、私たちの仲を取り持つためにウソをついてくれたのかも。
「ウソだろ……」
「ホント、郁也以外の人としないよ」
「マジか……クッソあいつ騙しやがって…」
悔しそうに頭を抱えて、それからゆっくり顔を上げる。見つめる郁也は優しく右手で私を引き寄せた。
「あー、よかった、本当に、嫉妬でどうにかなりそうだった」
「はは、案外郁也ってヤキモチ焼き?」
「……ウルセェ」
「かわい、!」
「くっそ、バカにしやがって」
ぎゅっと抱きしめられたから私ももっと強く抱きしめ返す。
好きな人だからキスしたいと思うんだよ。好きな人だからギュってしたいと思うんだよ。
ねえ郁也、それは間違いなくきみなんだよ。