はあ、とため息をついて寝返りを打った瞬間。
ピンポーン、と、インターホンが鳴った。
こんな時間に誰だろうと思いながらゆっくりと起き上がる。時計を見るともう9時過ぎ。
物音がしないからか、再びピンポーンとインターホンが鳴る。急いで玄関まで駆け下りて、「はーい」と恐る恐る扉を少しだけ開けた。
「えっ……」
開けた瞬間びっくりして、そんな間抜けな声を出してしまう。
だって目の前に、郁也がいたから。
「ワリィ、いきなり……」
「……どうしたの……」
「聞きたいことがあって」
「聞きたいことって、?」
どうしよう、いきなりこんな風にやってくるなんて想像もしてなかった。
「……林檎、おまえ、雄也となんかあったのか?」
言いづらそうに、険しい顔をしながらそんなことを言う。雄也に直接聞いたのかな。自分の幼馴染と元カノの話なんて聞きたくないに決まってるのに。
「ごめん……」
「ごめんってなんだよ……クソ、やっぱ本当なのかよ……」
「えっ、何が……」
「なあ林檎」
恐る恐る。今までの郁也じゃ考えられないくらいゆっくり優しく、手が伸びてくる。
でも、その手は頬に触れる直前で止まった。