「本当に待ってなくていいの?」

「うん、大丈夫、ひとりで帰れるよ」

「ほんとに……?」

「うん、それにね、なんかひとりで歩きたい気分なんだよね。ありがとね、舞」

「そっか……」


心配してくれる舞を笑顔でなだめて別れる。さすがに1時間以上待ってもらうのは気がひけるし。

今日は委員会。

いつもは郁也が終わるまで待ってくれていたんだけどなあ、なんて。

結局、郁也は今日一度も教室に現れなかった。付き合う前に逆戻りだ。

学校にも、もしかしたら来てないのかもしれない。


図書委員会が行われる図書室について、いつもの定位置である一番窓際に座った。

この席はなんだか落ち着くな。今はあまり何も考えたくない。

いつもは雄也が私の隣に座るけど、今日は隣が誰かの荷物で埋まってるから無理だろう。


委員会が始まる時間になって、委員会会長が立ち上がった。先生はまだきていないけど、もう始めるんだろう。いかにも真面目そうな委員長が号令をかけて、この会は始まる。

今日は、雄也いないんだ。


そんなことを思ったとき、ガラガラッと扉がいきなり開いて、汗だくの雄也が入ってきた。


「すいません、ちょっと遅れましたっ」


雄也は一度いつも座る私の隣を見て、席が空いてないことを知ると、ずかずかと私の前にやってきた。そして、ちょうど開いていた目の前の席に座る。

いつも、挨拶くらいかわすのにな。

そうか、もう、「郁也の彼女」じゃなくなった私は、雄也の友達でもないのかもしれない。


どうでもいいや、もう。
何にも考えたくない。


こうやって何気ない日を何度もなんども過ごしていれば、きっと忘れられる日が来るんだろう。中学生のあの時のことも、郁也のことも。

だんだん、ゆっくりと、忘れていくんだろう。