「ねえ、アンタさあ、林檎どうしたか、知らない?」


放課後。

モヤモヤしたまま荷物をまとめていた俺に、そんな風に話しかけてきたのは、林檎の心友、舞だ。

コイツとは犬猿の仲ーーでもないらしい。たぶん、俺と同じくらい林檎のことが大好きなんだろう。証拠に、ひどく不安そうな顔をしている。


でも……。そんなこと、俺に聞かれたって。


「わかんねえ」


コイツの前では何故だか素がでてしまう。
たぶん、林檎の大事な人だからだろう。

舞は間を少し開けてから心配そうな顔をして、「そう……」と呟く。視線は下げたまま。


俺だって。

俺だってわからない。何が原因で、何が嫌だったのか、ハキッリ言ってくれなきゃ。

付き合ってたって、両想いだって、俺は林檎のこと、なんもわかってねえんだよな。ホント情けない。


「あのさ、こんなこと聞くのはなんだけど……」


舞が、口を開いた。


「日曜日、デートだったんでしょ? ……待ち合わせに遅れたりしなかった?」