「……わかんない」

「え?」

「わかんないけど、大好きなんだよね、変かな」


うわ、私恥ずかしい。自分の顔が熱くなるのがわかった。きっと今私の顔は真っ赤なんだろう。

きっとこんなの聞いてくれるの、舞ぐらいだな。


「いや、わかるよ」

「え?」

「好きってさ、理由なんてないんだよねきっと」

「そう、なのかな」

「うん、それでいいじゃん。変なこと言わせてごめんね」


雄也は私の頭にポン、と手を置いた。優しいなあと思う。


「……雄也って絶対モテるよね」

「え、なんで?」

「だって顔もカッコいいのに、郁也と違って誰にでも優しいしフレンドリーだし」


まあ、郁也も表の顔はみんなに優しくしてるけど。裏の顔はアレだからね。

ホント、世の中不公平。その美しさ、分けてほしいよね。まったく。



「……バーカ。林檎は、多分誰よりも魅力ある人間だよ。……かわいいし」

「え?」


見上げた雄也の顔は、真っ赤。

……え? かわいいって言った? やっぱりモテ男ってそういうこと簡単に言えちゃうの?


「……って郁也なら言うと思うよ」

「なんだ、ビックリした、だよね、もう変なこと言わないでよ!」


あはは、ってふたりで笑った。でも、どこかでさっきの雄也の顔が、脳裏に焼き付いて離れない。

本当に恥ずかしそうに言うから、一瞬本気にするところだったじゃん。モテ男ってこれだからこわい。


「林檎」


聞きなれた声がして、後ろに振り返る。


「郁也っ」


きっとそう言った私、ご主人様を出迎えた犬みたいだったと思う。


「おっと、王子様のお出ましか。じゃあ、俺は帰るね」


そう言った雄也はサッと自転車を走らせてしまった。ちょっとでも郁也と話していくかと思ったのに。