優しかった西条クンの顔が一気に意地悪そうな顔に変貌する。私は驚きのあまりめを見開いてしまった。


「な、な…?! え、今の嘘?! え?!」

「迫られたのはウソじゃねーよ。朝からホントうざいし、とりあえずキスくらいはしてやっといたけど」


とりあえずキス?! 今朝見たアツーイキスを交わす2人を思い出して思わず顔が熱くなる。

あれのどこが「とりあえず」なんだ! ばっちし抱きしめ合っているところを私はしっかり見てるんだからな?

……てか何この人? 二重人格か何かでしょーか?



「なーんか勝手にイロイロ考えてるみたいだけどー……お前さっきの言葉忘れてねぇよな?」

「えっ…?」

「何でもすんだろ?」



ニヤッて……ニヤッて笑いました今! コイツは私の想像どうりかなりヤバイやつかもしれない。


「それとこれとは話が別なんじゃ…?!
ていうか、あんな風に王子様風に話されたらコッチだって信じちゃうに決まってるし…っ!」

「ふっ、王子様風ってなんだよ。
あーいう俺も、今お前の目の前にいる俺も、全部同じニンゲンだ。カンタンに騙されるお前がバカなんだよ」

「バッ……?! 何よ!?
ていうかそもそもね、学校という公共の場であんなことしてる方が悪いんでしょーが!」

「……おまえ、俺にそんな口聞いていいと思ってんのか?」



目の前の危険人物西条クンは、かなりフキゲンそうに私を見下ろした。その威圧感ったら蛇にも勝るほど。

私も負けじと彼をにらんでやる。もうここまで来て引けるもんか!


「……まだ睨んでくるとか、おまえおもしれーな」

「……それはドーモ」

「とりあえずさあ……なんでもするっつったよな、おまえ。」

「だからそれはっ…!」

「だから、お前俺の彼女になれ」

「だからアレはおまえがーーって、エッ?」



神様、今聞こえたのは幻聴か何かでしょうか? それともまたコイツの性悪なウソでしょうか?

でも見上げた先には、いたって真面目な顔をしたイケメンがいたのです____。



「何度も言わせんなよ。
おまえ、今日から俺の彼女になれ」



………はい?

私は本日二度目の拍子抜けを食らったのだった。