「…あぁ。でも…」

「やだよ!!皐月お兄ちゃんと離れたくない!!!」

「こら、夏帆!」

「だって、皐月お兄ちゃんの生徒になるには後5年も先なんでしょ?それまで会えないなんて嫌だ!!」


大きな目をさらに大きく開いて、顔真っ赤で半べそで俺に訴えてくる夏帆。


「すいません…夏帆、皐月さんが困ってるでしょ?」

こんなに純粋で真っ直ぐな想いを無視できるわけがない。



「夏帆」

夏帆の目線まで屈んだ。


「学校は遠くても、俺はここから通うよ。だから、今よりは会えなくなるかもしれないけど俺はここにいる」


「…本当?」

「あぁ」

「じゃあ、夏帆が大人になったら結婚してくれる?皐月お兄ちゃんと離れるなんて考えられないの」


指切りげんまんをしようと、夏帆が薬指を出してきた。


「…あぁ。夏帆が大人になって俺のことが好きだったらな」

その短かな指に、自分の小指を絡ませた。



「指切りげんまんね!絶対、皐月お兄ちゃんと結婚する!!」


満面の笑みでそう言った夏帆の顔は、今でも覚えている。



純粋で、真っ直ぐな想いー…