「皐月さん」

「…はい」

終わったー…


「このたびは、うちの娘が大変お世話になりました」

…え?

夏帆のお母さんが頭を下げた。

「いや…そんな…頭上げてください」

あれ、俺怒られるんじゃー…

「娘が言った通り、逆上がりのテストは皐月さんのおかげで合格することができました。ありがとうございました」

「ありがとう…ございました」

今度は夏帆も母親と一緒に頭を下げた。


「いえ…夏帆…さんの努力の結果ですよ。俺はただ教えただけで…」

「いいえ。それと、皐月さんの大変な時にご迷惑おかけしてしまったみたいで」

大変な時?あぁ、夏帆言ったのかー…


「皐月お兄ちゃんはテストどうだったの?」

「こら、夏帆!」

「えー、何で?」

母親に怒られてふてくされてる夏帆。


「…夏帆、これ見ろ」

そんな夏帆に笑いながら、採用通知を見せた。

「ごう…かく?」

読めない漢字があるみたいで、首を傾げている。

「あぁ、受かったんだ。俺も夏帆のおかげだ」


心から出た言葉だった。



「本当!!??先生になるの!!??」

「あぁ」

俺よりも大喜びの夏帆。


「おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「じゃあ、4月から高校教師に?」

「はい。ここから少し遠い学校ですが…」


「皐月お兄ちゃんいなくなっちゃうの!!??」

「!」


さっきまで大喜びしていた夏帆の表情が曇った。