___8月26日、晴れ。
その日は雷たちと他愛ない話で盛り上がっていつもより帰りが遅くなった。
「やべ。ちょっと話し過ぎたな。」
「そろそろ帰るか。」
「そうだね!」
「…さゆみ。」
「ん?何、雷。」
この時にはもうちゃん付けで言わなくなっていた。
「家まで送るよ。遅くなっちゃったし。」
「え!?い、いいよ!」
「送る。」
「でも雷たちと私の家、反対方向なんだよね?」
「送る。」
「1人で大丈夫だよ!」
「送る。」
「だからぁ…」
「さゆみ、諦めろ。」
「海ぃ~。」
「雷ちゃんがこうなると誰にも止められない。」
「…。」
蓮も横でコクコクと首を縦に振っている。
「……っ…。」
「送る。」
「…はぁ、分かった。よろしくお願いします…」
「おぅ!」

_____

「また明日なー!」
「またねー!」
「…じゃ、行こっか。」
「うん!」
「「……………」」
何だ、この沈黙は。
「_き、今日も楽しかったね!」
「…そうだね。一緒にいると時間経つのが早いね。」
「分かる!!もっと一緒に話したり、遊んだりしたいね!!」
「…__さゆみ。」
「何?」
「えっと、その…さゆみってさ、好きな…奴とか、いるの…?」
「いないよ?」
「えっ!?そうなの!?」
「うん…あ!でも、いるっていうといるかな!」
「えっ!?そうなの!?」
「えっと、海…」
「海っ!?」
「_ヘックションッ!!」
「蓮…」
「蓮っ!?」
「_クシュッ!」
((……風邪か…?))
「後、雷!」
「お、俺!?って、ん?」
「私3人のこと大ッ好きだよ!」
「__ッ…‼」
「へへっ。」
「…そっか。ありがとう。」
「どういたしまして!」

「___あーれー?相川雷じゃねーか。」
「「?」」
……誰?
「女連れてどこ行こうってんだ?」
雷の知り合い?
_ギュッ。
「?!」
雷が私の手を繋いできた。
「…行こ。」
「え、うん…」
「おーっと!無視すんじゃねーよ。あの時は世話になっちまったからよー、ちょっと顔貸せよ……今度こそは動けなくなるくらいギッタギタにしてやるからよぉッ!!」
「ッ!?」
…この人、怖い。
「…退いてくれる?」
「あぁ?何だって?よく聞こえねぇなー。もう少し大きな声で、言ってくんねぇかなーッ!!」
「…退けって、言ってんだよッ!!」
ドガッ!!!
「ッ!?」
_バタンッ!!!
雷はもう片方の手で相手を殴り飛ばした。
すごい…。
「カッ、…っ……く、ヤりやがったな。覚悟は、出来てんだろうなぁッ!!おいッ!!」
「…えッ!?」
相手の仲間であろう男の人たちがゾロゾロ出てきた。
「さあ、相川雷。ボロボロにしてやるから楽しみにしとけよ、ヒヒヒヒヒッ…!!」
「…っ、雷…」
「………さゆみ、俺の側から離れないでくれる?」
「えっ…?」
それはどういう意味で?
危ないから離れないでって意味?それとも…
「…分かった!」
「ありがとう。」
雷は静かに笑みを浮かべた。
「…お話は済んだか?」
「「…」」
「、お前らッ!!やっちまえッ!!」
「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」
「…来いよ、_全滅させてやる(ボソッ。」

___ガッ‼ドンッ‼

___ドゴッ!!ダンッ!!

何の武器も持ち合わせていない雷は拳一つで相手をやっつける。それに加え、相手方は拳で戦う者もいれば武器を持って雷に襲いかかる者もいた。
見てられなかった。いくら雷が強いと言ってもこれでは雷が不利すぎる。勝てるわけがない。
_もう止めてほしい。
_早く終わってほしい。
_死なないで、雷。

「_クソッ!化け物かよッ!……こうなったら、」
「ッ?!」
何?何でこっちに来てるの…?
「おい女ッ!こっち来いッ!!」
「いやっ…!!」
「___ッ!!」
助けて…っ____ゴドンッ!!!
さっきまで近くにいた男の人が目の前から消えた。
「…」
横に向くと、壁に埋め込まれていた。
「__…おい、てめぇら。」
…雷?
「この女に指一本でも触れてみろ、ただじゃおかねぇぞ…ッ!!」
ゾクッ!!
この瞬間この場にいる私を含め誰もが殺気を感じた。
__それからはあっという間だった。
雷の恐ろしさに臆したのか、さっきまで威勢を並べていた人たちは次々と逃げていき、辺りは急に静かになった。
「「………」」
「…ら、雷?」
__フラ、バタンッ。
背中を打つような感じで倒れた。
「雷ィィィ!!だ、だだ大丈夫っ!?」
「_……ダメかも。」
「えっ!?うそっ?!」
「うそ。」
「「……」」
「らぁいぃー…っ…!!」
「アハハ(笑)ごめんごめん、大したことないよ。へーきへーき!」
「平気そうには見えないけど。」
「久しぶりだったから体が思うようにいかなくて。」
「そうなの?」
「うん…俺ね、もうケンカはしないって決めてたんだ。大切な奴らを傷付けさせたくなくて…けど、さっきはさゆみが危険な目に合うんじゃないかって気が気でならなくて我慢、出来なかった……ごめんな、怖かっただろ。」
「_ッ……_!」
いつの間に私の目から涙が流れ、止まらなくなっていった。
「巻き込んでごめんな。」
雷はスッと私の頬に手を添えた。
「無事で良かった…っ…!!」
「っ!!」
_何故涙が出てくるのか分からなかった。
怖かったから?_もちろん怖かった。
雷が無事だったから?_それはもちろん無事で安心した。
…たぶんそれ全部引っ括めて、雷が優しいからだっ___。
「…っ、雷…」
「ん?」
「…守ってくれて、ありがとう…っ__!」
私は頬に触れている雷の手に自分の手を重ねた。
「っ!!…どういたしましてっ!」