桜舞う四月__


私も今日から高校生になるんだ…


でも一番祝ってほしい人はそばにいない。


「彼方…会いたいよ」


風で桜の花びらが舞っている中、ふと通り過ぎた人はどこか懐かしく感じて思わず振り向いた。


そこには半年間会うどころか声さえ聞けなかった彼方がいた。


「彼方…」


思わず涙が溢れてきた。


すると彼は想像もしてなかった言葉を返した。


「あんた、誰」


そこにいたのは前みたいに優しい瞳をした私の大好きな彼方ではなく冷たく氷のような瞳をした彼方だった。


「かな…た。嘘でしょ、覚えてないの?」


「知らない。話しかけんな」


そっか…


私は何度出会っても彼方の瞳に映ることはないんだ。


想いを伝えるどころか存在すら忘れられちゃってるんだもんね。


グスッ…


あれ、また涙でてきちゃった。


片想いなんて慣れてるはずなのに…


なんでこんなに切なくなるんだろう。


「お前、泣いてんの?」


っ…、見りゃわかんでしょ。


あんたのせいで涙が止まんないんだよ。


なんて言えるはずもなく彼方の袖を握って泣くことしか出来なかった。


「はぁ、ほら。少しこうしててやるから泣き止め」


そう言って優しく抱きしめてくれたのは紛れもなく私の大好きな彼方。


あぁ、そっか。


記憶なくなっちゃっても彼方はやっぱり彼方なんだ。


無愛想で冷たく見えるけどほんとはすごく優しい。