わたしは後ろを振り返り、矢吹くんの腕を掴んだ。


「何?」


軽蔑したような冷たい目で振り返る矢吹くん……


私の知っている彼じゃない。


「あ、あの……」


急に怖くなって何にも言えなくなってしまう。


「何か用?野村さん。」


なんで……


いつもみたいに『ひなちゃん』って呼んでくれないの?


野村さんなんてまるで他人みたい。


「ひなちゃん。」


あ……


やっぱり矢吹くんだ。


私のこと呼んでくれたーーー


いつもと変わらないことなんだけど
それが嬉しくてたまらなかった