紫陽花流しをもう一度

ちょうど階段を下りる途中の彼を見つけた。幸いにもホームルーム中で誰も他になかった。

「あの、」

口を開いたと同時にいつの日かのように彼の人差し指が優しく私の唇を封じた。

「いけませんよ、他の誰にも気付かれぬようにしないと。私の気持ちも貴女の気持ちも。ものや思ふと人の問ふまで、と言うでしょう。」

また一緒に紫陽花を流しましょう、と囁くと彼はゆっくりと階段を下りて行った。


仄かに香る木蓮の香りと頬の火照りを感じながら、私もホームルームへと戻った。新しく始まる学期と恋の予感に胸を弾ませて。