「もうすぐ今年も終わるんだね」

「早かったなぁ、今年も」

2人が映るウィンドウ越しの夜の街は
すっかりイルミネーションで煌びやかになっている。

少し贅沢なシャンパンに
誰もが振り返るイケメンとの夜景が見えるレストランでの食事は、誰もが幸せなカップルだと羨む光景だろう。

こんな2人なら、その後に続く会話は
きっと…

「今年のクリスマスはどうする?」なんて
話だろうけど、私達の会話からは一切出てこない台詞だった。


「明日早いんだよなぁ。名古屋まで行かないといけないんだよ、今日のところはそろそろ帰るか」


…ほらね。

わざと逸らしてるのか…
いくら切り出そうとしても触れてこない。

触れてこないから
また、私もそれ以上は入らないで
またいい女を演じて…
私達は店を出て駅まで歩き始めた。


「あれ?真凛じゃない?」

賑やかな街並みでもひときわ目立つ美少年が話しかけてきた。

「やっぱり!真凛じゃん!久しぶりっ」
そう言っておもむろに私を抱き寄せる長身の彼に、見覚えがない。

「ちょ、ちょっと〜〜なんですか?」

突き放そうとして気付いたのは顎にあったホクロだった。

…ん?

このホクロどこかで…


「あ〜、ごめん!ごめん!俺だよ!篤志」

あ.つ.し?

あつし〜〜?


目が飛び出そうなくらい、ビックリして
声が出なくなった。

小川篤志。
女子の中でも平均身長な私の肩ほどまでしかなかった中3の時の同級生で白い肌にクリクリの瞳は
まさにお人形そのものだったからクラスではマスコット的キャラで人気だった。


のに!!


ベンと変わらないくらいの高身長に
引き締まった細マッチョ。

男らしいその姿に
篤志をはめ込むのは難しかった。