3月25日 6校時目。

グラウンドでの理科の授業は
とても寒くてシャーペンを、持つ手が震えた


「フジヤマ〜。シャーペン貸して」

「なんで持って来てないのよ」
頭は良いのにやる気がないんだか…
ベンは教科書ひとつすら持って来てなかった

「ちゃんと返してよね!」
文句を言いながらも貸してしまう自分が悲しいわ…

「ちゃんと返すよ。
来年の今日、同じ時間に、この場所で」


…え?…

来年の今日、同じ時間に、この場所で?


「どういう意味よ。」

「なにが?1年間の無償貸しってことだよ」

「なによ、それ。私は…」

…言葉に詰まった。

なんとなく言いたくなかった。

私は来年この場所にはいないんだよ。


ベンの意地悪。


知ってるくせに…。



なんで、そんな出来ない約束すんのよ。




なんで、そんなこと簡単に言うのよ。



人の気持ちも知らないで!




なんで、そんな笑顔すんのよ。



涙がこみ上げて来たのがわかった。
でも、その顔をベンに見られたくなくて
下を向いた。

「わかったか?」
私の頭を撫でるベンの手は暖かかった。

そうやってまた、優しくするんだ。

もう、バイバイなのに…
これ以上好きにさせないでよ。


「わかったら、返事は?」

声に出したら泣いてるのがバレちゃいそうで
私は小さく頷いた。