なにもない、病院は。

真っ白で、薬品の匂いにもとっくに慣れて、機械音がして。

私の心臓の音が聞こえるだけ。

静かに、静かに。

病気持ちの私はずっと病院で過ごしている。

まるで自分が存在していなくて。

自分が自分じゃないかのように感じた。

ふと、窓の隙間から桜が入ってきた。

君は私の扉の前の大きな桜の木に座っていて。



水色の病院服に、真っ白な雪のような肌。

色素の薄いベージュの髪を揺らして。

赤い目でこちらを見ていた。

最初は夢だと思ったよ。

だって、こんなにも綺麗な男の人初めてみたから。


君はふわりと笑い、話しかけてくれた。


それでいて、儚げで。

手が届かなくて。

触れられないの。