「試作品作るの?」


「うん。っていうか練習……」



調理係に抜擢されたメンバーの大半が何故か料理未経験者。


聞いた瞬間、目眩でぶっ倒れそうになった……。


呆れて言葉を失ったわたしに見かねた樹野くんの提案で、急遽お料理教室が行われることになったのだ。



「じゃあじゃあ! 出来上がったら実哉にも頂戴ねぇ?」



わたしの腕に抱き付いて飛び跳ねる実哉に、


「わかったわかった」


と、頷きながら動きを止めさせる。



「キャー!! 聖偉ちゃんやっぱり好きぃ!!」



そしたら余計に強烈なハグが返ってきた。


鬱陶しい……。


「出来上がったら持って来る。……みんなの分も」



こう言ってわたしは、さっきまで実哉が座っていた場所に視線を向けた。



「実哉ちゃーん。次教えてぇ」



そこでは、実哉に習ったブーケ作りに悪戦苦闘してる女の子たちが実哉を手招きしている姿があった。



「行っといでよ」

「聖偉ちゃん……やっぱり大好きっ!」


いつもより嬉しそうに笑った実哉が再びハグ。



実哉が楽しいならわたしも嬉しい。



実哉はわたしの唯一の友達だから。