褒めて下手に出て、気分を良くしたところで、説得しようと試みてるわけだ。



「そう? でも、やっぱり聖偉ちゃんが居てくれなきゃ」



相変わらず笑顔で交わしてくるところが手強い……。



まるでわたしの考えなんて見透かされてそうなんだもん。



それでも引くわけにはいかない。



「わたしが居たって何の役にも立たないし……」



自分でも気持ち悪いくらい謙虚な態度。


プライドプリンセスにここまでさせてんだから折れなさいよ!!



なんて心の中の叫びも虚しく……。



「ヤだっ……ちょっとっ!!」



怖いくらい爽やかな笑顔がどんどん近付いてくる。



演劇部予約済みの布の山に背中が当たり、これ以上さがれない。



布の山に身を預けたわたしに覆い被さる樹野くんの右手が頬に触れ、


左手はがっしりと腰元に絡みついてる。



「聖偉ちゃんの役は俺の癒やし係だから。一瞬も離さないよ?」



樹野くんが喋る度に、首筋に息がかかる……。



それが嫌で顔を思いっ切り背けるけど、


「ホントは嫌じゃないでしょ? 俺のこと軽いヤツじゃないって庇ってくれてたし」