いや……。


言ったのアンタたちでしょうが……。




これ以上は言っても無駄だから言わない。


後ろで樹野くんの魅力についてはしゃぎはじめた彼女たちをほっといて、わたしは食器と調理道具の計算を再開した。




「聖偉ちゃん。どっちの布が良いか見て」


いつの間にか、家庭科室の奥の部屋から出て来た樹野くんがわたしを手招きした。



「すぐ戻るから待っててね」


すかさず、くっついてくる勢いだった彼女たちにこう言うと、樹野くんはさっさと家庭科室の奥にわたしを連れて行ってしまった。







家庭科室の奥は、端切れから大きいものまで布という布で溢れかえっていた。



演劇部予約済み


なんて書かれた紙の貼られた布の塊もある。



それでも、中にはわたしたち以外に人は居なくて、家庭科室からの喋り声がぼんやり聞こえてくるだけ。



「樹野くん一人で十分じゃない? 仕切りも上手だし」



手近にあった布を何気なく触りながら、わたしは一歩前に居た樹野くんの背中に問いかけた。



昨日、怒り任せに食ってかかったら、逆に食われそうになったので作戦変更。