『おかえりなさい』
「ただいま…楓」
仕事から帰ってきた亮平さんを出迎えると
ぎゅーっと抱きしめられた
小さな声で
会いたかった、と言われ
私の心は揺れていた
『先にお風呂に入って…ご飯の準備するから』
亮平さんから逃げるように
私はキッチンへと向かった
なかったことにしてしまうかもしれない
そんな弱い心が出てしまう
小さな深呼吸をし亮平さんを待った
いつもよりお風呂を早めに済ませ
私の手料理を美味しそうに食べてくれる
「やっぱり楓の飯が一番だ」
幸せな時間のはずだ
なかったことにしてしまえば
亮平さんと暮らせていける
そう思わずにはいられない
『話、があるの、』
やっと言えた言葉に
自分の鼓動が大きくなっていた

