失恋の傷には媚薬を


このまま聞かなかったことにしよう、
心の片隅に
そんなことを考えていた

でも、
里奈の言う通り
なかったことにはできない
聞いてしまった以上
亮平さんの話は嘘になる

その嘘を知りながら
これから先、
亮平さんを信じるなんて無理

なら、やっぱり話すべきだ
どういうことか、知るべきだ



「いつでも連絡下さいね」


目を腫らした里奈が
手をブンブン振っている
タクシーが見えなくなるまで
私は里奈を見送った


家に帰ると、真っ暗だった
当たり前だが
父も母ももう寝ているだろう
静かに家の中へ入る
階段を上がると姉の部屋から明かりが漏れている
誰かいる?と
静かに中を覗くと
そこには姉のアルバムが開かれていて
コップとウィスキーがテーブルに置かれていた