失恋の傷には媚薬を



久々に歩く街並み
嬉しいはずなのに
私の心は沈んでいた



「お姉さんの彼氏って人、結局わからなかったですね〜」


『…うん』


「それにしても、いいお店でしたね」


『…うん』


「明日には帰っちゃうんですか?」


『…うん』


「部長とお姉さん、怪しいですね」


『…うん』



トボトボ歩いていた私の腕を
グイッと引っ張る里奈
その顔はとても怒っていた



『里奈?』


「部長に聞きましょう。全て、包み隠さず。これからのことを考えたら、聞かなかったことになんてできない。楓先輩が辛い目に合うのはもう見たくありません」


そう言い切る頃には
里奈の目にはたくさんの涙が溢れていた