「楓!?」
呼び出し音が長く鳴っている
出ないかと思い切ろうとした時
母が電話に出た
まさかかかって来ると思わなかったのか
かなりおどろいた声だ
『どうしたの?用があるならメールでもいいのに』
前に電話に出なかった時期
メールも頻繁にきていた
内容は必ず確認していたが
緊急性がないものばかりだったから
返信は一切しなかった
「いなくなったの、楓のところに行ってない?見かけてない?」
『は?誰がいなくなったの?』
慌てている母が
居なくなったと言っているが
前にもこんな電話があったことを思い出した
まだ実家で暮らして居た頃
チロというプードルを飼っていて
脱走したと会社に電話がかかってきたのだ

