「笹倉〜」


ちらっと横峰部長の席へ目をやると
ニコッと笑われる


はいはい、と席を立ち給湯室へと向かう
嫌がらせが始まっても
当の本人は何も知らず
相変わらずの毎日

何も知らない男性社員は
部長といい仲なんだ、と勘違いし
「ついに寿退社か?」「逃すなよ」など
勝手に盛り上がっていた



『お茶くらい自分で煎れてください』


横峰部長の机に湯呑みを置いた
着任2日目に自分の湯呑みを持って来たのだ


「いや〜、忙しくて。それに俺が煎れても笹倉みたいに美味く煎れられない」


ニコッと笑い湯呑みを口につける部長
上手いこと言ってるな、と
感心してしまう


『私も忙しいんですよ。下っ端は雑務が山のようにあるんです』