先輩、覚えてないんですか?
そう切り出した里奈は
昔話をし始めた
それは里奈が営業部に配属される前
3ヶ月研修の頃の話
4月に入社し各部署で
即戦力になるようにと
3ヶ月研修を受けることになっている
その3ヶ月目で
どうやら私が里奈を助けたという
『助けた?…いつ?覚えがない』
「そりゃそうですよー、助けてもらったのは仕事じゃないですから」
仕事じゃ、ない?
どういうこと?と聞いてみると
電車の中で痴漢にあっていた里奈を
私が助けたというのだ
痴漢?…?……あっ、思い出した
そういえば、そんなことがあった
隣の人が小さな声で「いや、」と
何かと思って見てみたら
隣の人の後ろの男性が
ニヤニヤしながら鼻息を荒くしていたのだ

