「お、おつかれさまです」
慌てて逃げるように去っていった女子社員
今の話、多分私のことだろう
どこの部署なのかわかっている
文句の一つも言ってやりたいところだが
そんなことしても何も始まらない
彼女たちが言っていたのが本当だから
カップをコーヒーメーカーにセットする
スイッチを入れるだけ
ほんの数秒待つだけで
良い香りが漂う
ホッと一息…するはずだった
「割れ物に触るみたいな扱いされてんの?」
その言葉にギョッとする
さっきまでテーブルで
大盛りのカツ丼を食べながら
里奈と話していたはず
あのカツ丼を食べてきたわけ?
「お茶、煎れてよ」
『へ?』
「笹倉が煎れたお茶、美味かったんだ」

