一息入れようと自販機に向かえば、見覚えのある後ろ姿に声を掛けた。


「お兄ちゃん!あっ、ごめん、副社長だね。」

「一花か。」

「お疲れさまです。」


兄である海翔は青山インテリアの副社長だ。若き副社長で社内では人気が高いが――


「まだ帰ってないの?お義姉さんが淋しがってない?」

「かもな。」

「早く帰れば?」

「一花もまだ帰らないのか?」

「もう少し。」

「なら乗せてやる。家は近いからな。」

「ありがとう!助かる。」


兄は既婚者だ。いくら若き副社長でも誰も狙わない。

新婚の兄は実家の近くに家を建てた。そして私は実家で暮らしている。

時間が合えば、実家に送ってくれるのだ。

奢ってくれたミルクティーを飲むと、甘さが疲れた体に染み込んでいく。


「どうだ?今回のプロジェクトは大丈夫そうか?」

「今の所は問題ない。」

「まあ、リーダーは渡部だろうから心配はしてない。」