蒼大さんの家柄も人柄も申し分がないのだろう。

父は蒼大さんの女関係を知らないから。


「お父さん、でも今は勤務時間内ですので。他の社員の目とかもありますから。」


やんわりと断ってみたが、


「今日ぐらいは誰も文句は言わないだろ。一花も26だ。身を固めるのも悪くない。」

「いえ、まだ早いですから。それに付き合いもまだまだ短いですし。」


蒼大さんが父の前で私の手を繋いできた。驚きに蒼大さんへ視線を向けた。

まっすぐに父を見つめる蒼大さんが口を開いた。


「私の父にも一花さんは紹介済みです。」

「ほう、そうですか。お父様は一花を何と？」

「とても気に入っています。結婚前提の話もしましたし、私は一花さんとの付き合いも末永く続けていきたいと思っています。」

『気に入っています？』

気に入ってないから秘書を私の前に寄越したんでしょ。

なんかムカついてきた。


「お父様が気に入ってる？私は気に入られてないと思います。だから………」

「父は一花さんを気に入ってる。」


強い口調で言葉を遮られた。