散り初め花火


 どれくらい時間が経ったか分からない。皆を探しに行く事も出来ずにボーッとしていると、いつの間にか花火の打ち上げが始まっていた。大きな破裂音と共に頭上に大輪の花が咲き、周りから歓声が上がる。
 それを見上げると鼻の奥がツンと痛くなってきた。夜空から降ってくる花火が涙で滲む。

「宮村、見つけた!」

 不意打ちで腕を掴まれ、身体がビクッと跳ねた。振り返ると高橋君が息を切らせて立っている。

「いつの間にか消えてるし電話しても出ないし、どこで迷子になったんだって皆で手分けして探してたんだぞ」
「あ……ごめん……」

 着信があった事なんて全然気づかなかった。正直今はまだ皆の元へ向かう気にはなれなかったけれど、確かに急にいなくなったら皆に心配をかけたはずだ。

「宮村……?」

 目を潤ませている私を見て高橋君が怪訝そうな顔をする。慌てて私は何度も瞬きをして涙を隠した。

 また高橋君の背後で花火が上がる。大きく開いた花は一瞬で散って、赤い光が砂金を集めた様な尾を引いて落ちてくる。何となく、さっき見送ったくーこの耳元で揺れるイヤリングを思い出した。
 柳田君とくーこの姿をまともに見るのはきっと辛い。でもそろそろ覚悟は決めなきゃいけない。誰にも明かさないまま散った私の片思い。悟られない様に平気な顔は出来るかな。

「……あの花火、宮村がつけてるやつに似てる」

 私の視線につられて空を見上げた高橋くんがぽつりと呟いた。