「いいよなー、紺の浴衣。宮村の雰囲気にあってる。なあ高橋」
「え?ああうん、正統派って感じ」
柳田君が同意を求めたので、高橋君もこちらを見て一緒になって褒めてくれる。ストレートな賛辞は嬉しいけど、同時に物凄く照れ臭い。
心臓の鼓動はドクドクと周りに聞こえそうなくらい大きな音を立てている。
頑張って本当に本当に良かった。神様、心から感謝します。
「あ、ありがと……」
「ちょっとおー、結依だけ?うちらも浴衣着てるんですけどー」
口を尖らせたちょことみいちゃんが柳田君の背中を叩く。
「んーまあいんじゃね?けどお前らは可憐さも色気もどっちも足りないんだよなー」
「失礼過ぎない?だからあんた達モテないんだよ。岩田君とかなら絶対もっと褒めてくれるのに」
「サッカー部の奴らがお前らなんか相手にしないだろー」
「ちょ、柳田マジムカつく!」
みいちゃんが拳を振り上げる真似をして、笑いながら彼がそれを避ける。
それと同時に花火開始前の合図の音が聞こえて来て、結局私達は連れ立って中村君が知っているという穴場に向かって移動する事になった。
途中りんご飴の屋台があったので、皆の輪をそっと離れて小走りに近づいた。お土産にりんご飴を買ってくる様にお姉ちゃんから言われている。
当の本人は会場ではなく、窓から花火が見えるというマンション住まいの友達の家に遊びに行くらしい。この会場の雰囲気と買い食いが楽しいのに、遠くから花火を見るだけの方がいいだなんて大学生って分からない。
並んではいなかったし、急いで買えばすぐ皆に合流できるはずだった。


