散り初め花火


「ねえ、あれ岩田君と四組の安西さんじゃない?」

 屋台の並ぶ通りを目移りしながら時折買い食いしつつ歩いていると、私とくーこの前を歩いていたみいちゃんが振り返って興奮気味に言った。
 彼女が指差した方を見ると、確かに同じクラスの岩田君と隣のクラスの安西さんが歩いている。視線を下げて行くと、二人の手は人混みの中でしっかりと握られていた。

「えー、あの二人付き合ってたんだ。岩田君ってキヨちゃんと付き合ってるんじゃなかったっけ?」
「春に別れたらしいよ」

 こっそりと付き合っているカップルも、こんな風に花火大会で目撃されて皆に知られてしまう事は多い。
 来なければバレないかもしれないのになあと時折思う。でもきっと、皆我慢が出来ないんだ。花火大会を恋人と、なんて最高に憧れるシチュエーションだし。私だって彼氏が出来たら絶対一緒に来たい。

「別れても即次の相手が見つかるのが凄いよねー、さすがサッカー部」
「フリーな人殆どいないもんね」

 二人を目で追いながら感心した様にちょことみいちゃんが言った。
 県下でも割と強いと評判の男子サッカー部は、校内きっての人気者集団でとにかくモテるので、彼女いる率がやたら高い。先程チラッと話題に出た和田君もサッカー部のエースだ。
 確かにサッカー部の男子は人気あるけど、試合の時はちょっと格好良いけど、でももっと格好良くて目が離せない男子を私は知っている。

「おっ今度はモテない軍団発見!」

 今度は背の高いくーこが軽く背伸びをして前方を指差す。
 人混みの隙間からのぞくように見ると、すぐ先の屋台の横。同じクラスの男子が数人ではしゃぎながら焼きとうもろこしを齧っていた。
 その中に柳田君の姿があるのを見つけて、ドクンと心臓が跳ねる。会えた。