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「ゆーいー!こっちこっち!」

 ちょこが私の姿を見つけて大きく手を振る。
 いつもなら駆け寄る所でも、浴衣を着てたらそんな事は出来ない。ここまで知り合いには誰にも出会わなかったけどいつどこで見られてるか分からないし、出来るだけ歩幅を小さくして上品におしとやかに歩く。
 仲良し四人組の中で、待ち合わせ場所に到着したのは私が最後だった。周りは既に会場方面へと歩く人でいっぱいだ。

「結依も浴衣だ!着付けとか髪とか自分でやったの?かわいーじゃん」
「着付けはお母さん。髪は自分でやったよー。くーこ、浴衣着なかったんだ?」
「だって暑いんだもん、浴衣なんて無理」

 ちょことみいちゃんは私と同じく浴衣姿。ちょこのは淡い黄色と白のストライプに爽やかな朝顔の柄。みいちゃんの浴衣はピンク系で桜と蝶が舞っていてキラキラ光るラメが華やかだ。くーこは浴衣ではなく、タンクトップとデニムのショーパンの上に薄くヒラヒラした赤い花柄のワンピースを前を開けて羽織っていた。

「結依、お揃い」

 くーこが赤い石のついたイヤリングの揺れる自分の耳を指して笑う。髪をお団子にしているのでイヤリングがよく目立つ。今日の格好に似合っていて大人っぽい。私のイヤリングも浴衣と合ってるといいな。

「誰か会った?」
「今んとこ和田君が高校生の彼女と歩いてるの見たくらいかなー。けど皆行くって言ってたからどっかで会うんじゃない?」

 毎年八月の下旬に催される地元の花火大会は、学生にとって夏休みの一大イベントだ。付き合ってるカップルはデートとして外せないし、相手がいない私達みたいなグループにとっても半年後に迫る高校受験前の最後の息抜きでもある。屋台の並ぶ通りを歩いていると多くの知り合いに会うけど、非日常の中で会うクラスメイトはいつもと違って何だか照れ臭い。