でもそれは出来ない。 泣き叫んで、怒り狂ってる人が沢山いた。 息子を、兄弟を、恋人を、奪われる悔しさを、みんな口々に叫んでいた。 そんな中を、わたしに行けるというのか。 家族でも、恋人でもないわたしに。 この人混みを蹴って行く勇気が、あるというのか。 不思議と涙は出ていなかった。頭がボーッとした。 笛が鳴った。 ああ、行ってしまう。 そう思っても声が出ない。 ひたすら見続けた。船に乗る彼らを。 君を。