ひとり戦場に行く君へ





その瞬間、強い風が僕に吹いた。



そうだった。



なんで忘れていたんだろう。




僕を残して死んだ彼女。その死があまりに精神的苦痛を僕に与えすぎた。



そして大事なことを忘れさせた。



──────……




『理人くん、お庭に綺麗なかすみ草があった。見て!』




『理人くん、このプリンすごく美味しい!食べて!』





『理人、こっちにある花、すごく綺麗!見て!』



『理人が食べなよ。わたしは前に食べた!美味しかったよ!だから食べなよ!』




──────……




………ああ、そうか。



また、見てって、言いたかったんだ。




先生に言われてようやく気付いた。



いや、本当は気づいていた。それでも見えなかったのは、



あまりにショックで、本当にショックで、



考えることも放棄したから。