家で一休みし、そこから電車で事務所に向かう。
事務所の社長か。
気に入られるの等お安い御用。

「こんにちは〜」
事務所の自動ドアが開くと私は笑顔で挨拶をする。
「あ、あなたが玲香さん？」
「はい！」
「こういう者です。」
そう言って名刺を差し出してきた人は案の定社長さん。
【丸岡プロモーション 丸岡佐紀子】
「大原玲香と申します！これからよろしくお願いします！」

「あらなかなかいい高校に通っているのね」
なにやら資料のようなものを見ながら話す。
「はい、おかげさまで」
好感度120%の笑顔は目が合っていなくても気を抜かない。
「あ、そうだわ、玲香さん。」
「はい」
「アイドルにとって大事なことって分かる？」
目を合わせてきた社長の目を私も射止めるように見て「教えてください」と言う。
「オタク達の彼女でいること。だからリアルでの恋愛がしたいのならアイドルでいる資格はないし、アイドルでいたいなら青春を捨てなさい」
「おっしゃる通りです。」
こんなに純粋な顔で嘘を吐ける高校一年生はこの世に存在するのか。
社長はまさかこんな素直な子がさっきまで彼氏と下校していたなど想像もしていないのだろう。