ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「戻って来たよ、ミライ」

戻って来たんだよ。

「うん」

とミライがスッと顔を上げた。潤んだ瞳から今にも涙が溢れそうだ。

「おかえりなさい…」

「ただいま、ミライ」

もう一度ギュッと強く抱き締めながら、ミライの頭を優しく撫でた。とホッとしたように胸に顔をうずめてくるミライ。

「よかった…」

湧いてくる安堵感と共に、あったかい温もりが僕の心を包み込んでくる。

「あーあーあー、ゴメンゴメン、ちょっといいかな」

と、所長が横から僕の肩に手を掛けてきた。

「な、何ですか?」

せっかくイイ気分でいたのに。

「一応、決まった段取りはちゃんとやっておきたいんだ。せっかく準備したんだからね。ちょっと君だけこっちへ来てくれないかな。もうちょっとの辛抱だからさ」

と所長が、宥めるように僕の背中に手を廻しながらクルッと振り返って、ミライと引き離すように前へと歩き出した。

「どうするんですか?」

何を考えてるんですか今度は。

「いいからさ。ほら本田君たち、ミライの方を宜しく頼むよ」

と指示を出しながら歩いていく所長に導かれる先に、白い布で覆われた円筒形の台座があった。