ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「まあまあ、慌てない慌てない。逃げやしないからさ。ホントはもうちょっと局長に捕まってると思ってたんだよね、ウン」

とあさっての方向を向いて何やらウンウンと頷いている所長。

「な、何ですか?」

また何か企んでるんですか?

「ちょっと段取りがあるんだよ。ほら」

と所長に肩を掴まれて、そのままクルッと後ろを振り向かされた。

「…あっ、」

控え室の一面のガラス窓の向こうに、奥から出てきた本田君と広海君の後について歩く、白い布を女神のように身に纏ったミライの姿が見えた。ゆっくりと歩くミライは伏目がちの足取りだ。

(ミライ…)

ミライはまだこっちには気付いていない。と机の列の間を通り抜けた三人が、本田君を先頭に控え室からガラス戸を開けて研究室へと入ってきた。とそこで本田君と広海君が左右に分かれて、間から俯いたままのミライが前に進み出てきた。

「ミライ!」

思わず声を掛けた。とパッと顔を上げるミライ。

「あっ!」

と声を上げるや否や、喜び一杯の笑顔で駆け寄ってくるミライ!

「会いたかった!」

とそのままミライが胸に飛び付いてきた。両腕で抱き止めてギュッと抱き締める。途端にミライの温もりが肌に伝わってきた。久しぶりに感じる、ミライのあたたかな温もりだ。