ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「僕はフラれてしまうんですか…」

結果、ミライが僕じゃない人間を笑顔で見るようになるんだ。

「そうさ。そしてミライは、君の事を忘れ始める」

「!」

ショックな言葉だ。

「初期化しないでミライが動かなくなる事態を避けるには、これしか方法はないよ。二年経てば帰ってくる、そう言っていなくなれば、ミライのココロの痛手は小さくて済むからね」

確かに、そうかも知れませんよ、でも!

(ミライとの『終わり』を何とか避けられないんですか!)

もうわずかな望みもないって言うんですか、所長!

「とにかく、局長の言う通り本田君を次の管理者にして実験を続けていこうと思うんだ。今後はミライも外へ出さないつもりなんだよ。だから君がここへ来なければミライとの接点はなくなる。もちろん電話ぐらいはうまく話を合わせてしてくれて構わないよ。会うことだけ一切やめてくれればいいんだ」

と全ての希望を掻き消してくれる言葉を並べた所長が、カップを手にコーヒーを啜った。

「ボクも、一ヶ月ぐらい休暇をもらう事にしたんだ。君たちの次にミライに会ってるのはボクだからね。ほら、もうチケットも予約したんだよ。ボクの方は準備完了さ」

と上着の内ポケットから携帯を取り出してまじまじと見つめてきた。そのままじっと構えて動こうとしない所長。

(…その気なんだ、所長はもう)

決断を求められている雰囲気。

「ホントに、それしか方法はないんですか」

問い掛けると、所長がゆっくりと前のめりになった。

「本気でしかこんな事は言わない。ミライの事を思うならそうして欲しいんだ。本気で『みらい』の事を思うなら、ね」

所長の真剣な眼差しに頷いて返す以外ない。僕個人の感情より大事な、『みらい』があるんだ。