「で教授、研究は何をすれば?」

尋ねると、教授が僕の肩に手を掛けてきた。

「今まで通りの事をすればいいだけだ」

と教授が言い終わるなり、眉尻をピクッと動かした。

(ム…)

何ですか?明らかに何か企んだ顔付きですけど教授?

「今度は何を…」

思い起こせば去年の今頃、男を振り回すジャジャ馬振りが有名だったアイツを、教授はわざわざ修士生として引っぱって来て僕に押し付けて来た。曰く、『彼女は行動を観察するには最高の逸材だよ』と、それはまあ嬉しそうに。

(お陰で、僕がどれだけ苦労してきたコトか…)

実際、教授は彼女に振り回される僕を観察して楽しんでた様子がアリアリだった。

「何も企んではいないぞ」

と口元をニヤつかせる教授。絶対何か企んでる!でなきゃ今日の今日まで話を隠してた意味がないっ。

(面倒な事にまた巻き込もうと…)

もうウンザリですよぉ。と、教授が僕の肩をポンと叩いてきた。

「何も心配する事はない」

いやいや、言うのは簡単ですけどね。と、教授が一つ咳払いをして続けた。

「とにかく、今日は所長の研究所に行って来てくれるか。この話を言い出したのは彼の方だ、今後の段取りの一切は彼に任せてある。君が、しっかりと聞いて来てくれ」

と僕の肩を叩いてそっぽを向く教授。

「えっ、私が一人で、ですか?」

教授は行かないんですか?