ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「昨年末に記者会見をした時点で耐久実験の意義は終わっとるんだ。これ以上外部の人間に関わらせる必要がどこにある。いいかね、クワン君の和解金にいくら掛かると思っとるんだ。テレビや新聞雑誌の取材費で何とか賄えたが、でなければ数人のクビを切っていたところだぞ」

と局長が一歩所長に詰め寄った。

「ただでさえ厳しい予算の中で、君が懇願するからあの何とか君をクワンの後継として認めたのだよ。これ以上のムダ遣いは許さんぞ。来期以降の実験は復活させる二号機の管理者を後継所員、一号機の管理者を本田君で進めたまえっ」

と息巻く局長。

「えっ、私ですかっ?」

と傍にいた本田君が慌てて声を上げた。

「そうだ。全て丸く収まるじゃないか。不満があるとは言わせんぞ」

と顎を上げる局長。ホント、何てフテブテしいんだこの人はっ!

「いやしかし局長、それでは以前お話したような危険性があります!」

と食い下がる所長。って、危険性って何ですか?

「だったら初期化して始めればよかろう」

初期化?何なんですか?何の話をしてるんですか?

「局長、そんな事をすればこの一年間の苦労が、」

と所長の言葉を、局長の怒声が掻き消した。

「くどいっ!契約の延長はないっ!来月までで打ち切りだっ」

と、続けて局長が僕を睨み付けてきた。

「君もいいかねっ!契約終了日以後の所内への立ち入りは一切認めんからなっ。肝に銘じておきたまえっ!」

と最後はフンッと反り返って出て行く局長。

(そんな、)

言い返す暇すら無いんですか。と、局長が出て行った扉がバタンと閉まって、辺りがシーンと静まり返った。