ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

 後片付けもそこそこに大学を出て、研究所に着いて階段を上って前室に入り、控え室の扉を開けようかという時、所長に呼び止められた。

「やあ、ちょうど良かった。年度末になると忙しくなるからさ、今のうちにミライの一年点検をしておきたいんだけど、いいかい?」

別に断る理由はないですよ。

「ええ」

「じゃあセーフモードからはじめよう」

と所長に導かれて、ミライを本田君が待つ台座へ連れて行ってセーフモードにして、一年点検をしてもらう。

「もう一年経つんですね。早いなあ」

一年前の朝、教授室で何も知らずにミライと出会った時の事が頭に浮かぶ。

「君と一緒に局長に怒られながら契約したんだっけ。まるで昨日の事のようだね」

と苦笑いをする所長。そうだった。

「確か契約って一年でしたよね?その後は?ミライとはどうなるんですか?」

急に気になって尋ねた。と、ニッコリ微笑み返してくる所長。

「もちろん、契約は継続するつもりだよ。ミライは君とじゃないとダメだからね」

それを聞いて一安心。

「待てっ、そうはいかんぞ!」

と突然の局長の声だ!

「局長!」

慌てて振り返ると、正面の入り口に局長が立っているじゃないか!

(待てって、まさか!)

と局長がふてぶてしい表情でノッシノッシと歩み寄って来た。