「私もう、向こうの研究に夢中なの。だから先生の所には戻らないわ」

と首を振る広海君。

「戻って来ないのか?」

それじゃ変わらないじゃないか。

「うん。私も、所長の研究の一員なんだもん」

そう言われると返す言葉がなくなる。

(確かに、人に言えた立場じゃないか)

と、広海君が横からスッと僕の腕を取ってきた。

「でもね…」

ん、何だい?

「先生への気持ちは、あの時とは変わってないから、ね」

と僕の腕を取ったまま、しな垂れるように体を寄せて胸をギュッと押し当ててくる広海君。見つめる瞳の奥には艶やかな輝きがある。

(そうか、あの頃と変わらない、ってコトか…)

広海君にはまだ僕への気持ちがあるんだ。

「食べ終わったら、ウチへ来るかい?」

「うん」

と微笑んで返してくる広海君。今夜は、素敵なイヴになりそうだ。