ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

 日も暮れた頃、研究所の控え室の扉が開いて、広海君が帰って来た。

「センセー、見たわよテレビ!」

と開口一番、僕を指差してニヤけながら寄って来る広海君。

「そ、そうか」

立ち上がって迎えると、広海君が肘で僕の胸を小突いてきた。

「カッコ良かったわよ~。セリフもバッチリ決まってたじゃな~い」

「そ、そうか?」

改めて言われると照れくさいな。

「私、男の人の真剣な目、大好き♪」

おおっ、久しぶりに見る艶やかな眼差し!

「そうか」

これは脈ありかも!

「そう言ってくれると嬉しいよ」

満面の笑みを浮かべて一歩踏み寄った。

「うんでも、それは先生だけじゃないわ。所長も、本田さんも、みんな真剣なカッコイイ目をしてたわよ」

とパッと周りを見渡す広海君。

(オイオイ何だよ)

僕だけじゃないのか。

「先生の研究への気持ちはよくわかったから。これからも、頑張ってね」

と微笑む広海君。これは、許されたのか突き放されたのか?

「…ありがとう」

ま、笑顔を見せてくれただけ前進と考えるべきかナ。