ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「…はぁ~、これでクワンとロイのふたりが上手くいってたらさ~、もっとちゃんと胸張って発表出来ただろうになぁ~…」

ガックリと、ちょっとオーバーに肩を落としてみせる所長。

「元気だして」

とミライが優しく声を掛けた。

「おぉ~、ミライありがとう~。ミライの笑顔がなにより励みになるよ。ボクは頑張るよ、ミライの輝く笑顔を曇らせないように!」

と両手を勢いよく広げて元気に振舞ってみせる所長。

(笑顔を曇らせないように…)

とその時、「ここに残らないといけないのね」と言った昨日の寂しげなミライの顔が頭に浮かんだ。

(あんな顔は見たくないよな)

ミライを寂しくさせない為には、大学にも一緒に出掛けられるのが何よりなんだけど…。

「所長、何とか会見を考え直してもらえませんか?」

と切り出した途端、所長がフッと振り返ってきた。

「なぜ?」

と首を傾げる所長に、一歩踏み寄って返した。

「なぜって、所長だってわかってるでしょう、テレビで会見なんてしたらどうなるかぐらい!きっと出掛けるどころの騒ぎじゃ無くなりますよ!」

と言葉を投げると、所長が頷き返してきた。

「うんまあ、そうなるだろうね」

だからこそ、大きな悩みがあるんじゃないですか。