ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

 次の日大学から帰ってくると、研究所の周りは中継車やら何やらで大騒ぎになっていた。人だかりの中には外国人記者の顔も見える。

(これは大変だゾ…)

このままではマスコミを賑わす時の人になってしまうのは確実だ。

(マッタク嫌になるよ)

ヤジ馬の学生が集まっただけでもウンザリしたっていうのに。

(会見、中止にならないだろうか…)

その日は久しぶりに正面エントランスから中へ入った。吹き抜けのホールには、ズラリと並んだパイプ椅子の列の先頭に長テーブルが置かれて、背景にミライの円筒形の台座を覆っていた大きな白い布が掛けられていた。壁際では照明やカメラのセッティングが進められていて、会見場らしい雰囲気が着々と整いつつあった。

「…後戻りは出来ない、か」

ウンザリしながら階段を上り研究室へ向かった。中では所長と研究員たちが何やら輪を作って並んで立っていた。研究員の肩越しに、輪の中でこっちを見て微笑むミライの顔だけが見える。

「おかえりなさい!」

声を上げたミライにただいまと返事をして歩み寄る。と研究員たちが真っ直ぐ立ったまま、顔だけを一斉にこっちに向けた。

「な、何やってるんですか?」

何かを隠しているような、異様な光景ですけど。

「見てごらんよ、ほら」

とスッと脇へ避ける所長。とみんなの輪が解けた中に、パールホワイトのロングドレスを着たミライの姿があった。大きく開いた胸元を飾るダイヤモンドペンダントがキラキラと目に眩しい。

「おー、キレイだ!」

とグッと可愛らしく微笑むミライ。化粧も決まって魅力倍増だ。

「ほ~ら、こんなに綺麗なんだ。胸張ってお披露目したいって気持ちもわかってくれるだろう?」

とニッコニコの所長。

「え、ええ、まあ」

所長の気持ちもわからないではないですよ。