ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「ねぇねぇ先生、テレビが来るんでしょ!明日は楽しい事になりそうね♪」

と、横から広海君がニッと笑みを浮かべて話し掛けてきた。

「楽しくなんかないって」

矢面に立たされる僕の身にもなってくれよ。

「私は大学のゼミに出るから居ないけど、頑張ってね先生!」

ええっ!自分は逃げるのかよ!

(卑怯者っ!)

久しぶりに憎らしい笑顔なんかしてっ。

「ねぇ、先生はイヤなの?」

と、ミライが横から覗き込むように聞いてきた。

「そりゃイヤだよ。テレビでお披露目なんてしたら、ミライを取り囲む人が増えるに決まってる。そうなったら当分、大学どころかどこにも一緒には出掛けられないよ」

騒ぎが収まるまではムリに決まってる。

「当分って、どのくらい?」

ん、どのくらいって、

「一週間とか二週間とかじゃなくて、一か月とか二か月とか、ひょっとしたら一年とか…」

ミライに『萌え~』なオタクな人たちが追いかけ続けて来るかもな。

「そんなに?」

「ああ」

なにしろ、世界で初めての、たった一人のパーフェクトなロボットなんだから。

「そんなに長い間、先生が出掛ける時は私、ここに残らないといけないのね…」

と眉をくねらせるミライ。そんなに寂しそうな顔しないでくれよ。

「そうならないように何とか考えてみるからさ」

「うん」

と頷いて寄り添って来るミライ。

(何とかしないと…)

一緒に大学には出掛けたい。広海君とこうなっちゃった今、ミライが居るのと居ないのとでは実験室での気分がまるで違う。

(…とはいえ、どうしたもんだろう)

妙案はなかなか浮かんでは来なかった。