ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)

「どうして?君は、ミライをここまで育てあげた大事なメンバーの一員だってボクは思ってるよ。そうだろ?」

とじっと見つめてくる所長。いやいや、そんな事を言ってるんじゃないんです。

「違いますよ所長、勘弁して欲しいのはテレビの会見そのものの方ですよ。テレビに出たりしたら、ミライと僕は今以上にマスコミやヤジ馬に取り囲まれます。そんなのはゴメンですよ」

それが正直な気持ちです。と、所長がパッと僕の両肩を掴んでまじまじと見つめてきた。

「よぉ~く考えるんだ。遅かれ早かれ、お披露目はしないといけないんだ。だったら早く済まして置くに越した事はないよ。そうだろう?」

いやいや、そうかも知れませんけど、

「だからって、世の中がロボットで賑わってる今、テレビになんか出たら…」

火に油を注ぐだけじゃないですか。と渋っていると、所長が首を縦に振ってみせた。

「わかってる。ちゃんとわかってるよ」

と落ち着いた声で頷いた所長が、言葉を続けた。

「君の気持ちもわかるけど、もう話は進んでるんだ。後戻りは出来ないよ」

とまじまじと見つめてくる所長。そんな、

(後戻り出来ないって…)

うな垂れそうになった瞬間、所長がパッと明るく声を上げてきた。

「だからさ、どうせやるなら心から楽しもうじゃないか!明日のミライのお披露目をさ!」

と僕の肩をパンッと叩いて、所長が振り返って行ってしまった。

(ミライのお披露目…)

このままじゃミライがテレビの前に曝されてしまうゾ。